たった2小節のメロディーを鼻歌で歌うだけで、楽曲を1曲、丸ごと作成してしまうという、カシオ計算機のiPhone用アプリが大人気だ
2015-05-26 Chordana Composer
CASIO「Chordana Composer」

作曲はできないけれど、曲を作ってみたい――。そんな矛盾した願いを実現してくれるのが、カシオ計算機がリリースしたiPhone用アプリ「Chordana Composer」だ。これは、たった2小節のフレーズを入力し、曲のジャンルと曲調を選ぶだけで、フレーズをもとにメロディーや伴奏を自動的に作成し、1本の曲を作り上げてしまうというアプリ。フレーズの入力は鍵盤を用いるだけでなく、マイクから入力することも可能。つまり鼻歌を歌うだけで、曲が1曲完成してしまうのだ。

Chordana Composerを開発したカシオ計算機のコンシューマ事業部 企画部 アプリ企画推進室の南高純一氏にこのアプリの開発理由について聞くと、やはり「誰でも頭の中に自分のメロディーがあって、世間のヒット曲よりもそちらの方がいいと思っている。それだけに、頭の中のメロディーをにしたいという潜在的な願望があるのではないかと思い、アプリとして開発した」とのこと。誰しもが密かに抱いているニーズを顕在化できたことが、アプリのヒットにつながった。 

ではChordana Composerはどうやって2小節のメロディーから曲を作っているのだろうか? 「多くの独自ノウハウが詰め込まれている」と話す南高氏に、その仕組みをできるだけ簡単に教えてもらった。

アプリを利用するには、まず最初にフレーズを入力(鼻歌の録音、またはピアノ鍵盤による演奏)し、どんな風に仕上げたいのか、曲のジャンルや曲調を設定する。アプリには、人間が自然な音階と感じる音符の接続ルールや、コード進行などのデータベースが収録されており、入力フレーズをもと曲の骨組みと言えるモチーフを生成。そこに曲調ごとのリズムとテンポ、そして伴奏や間奏を付け加えて作曲するという。

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人間が聴いて自然と感じるメロディーには音符の接続ルールがあり、それはキーとコード進行によって決まってくる。アプリは曲調ごとの「らしい」コード進行や接続ルールを元に、独自のアルゴリズムによってモチーフからイントロ、Aメロ、Bメロ、サビといったメロディーを構成し、伴奏を作り上げていくのだそうだ。そこには、ユーザーが入力するフレーズはもちろん、楽曲のジャンルと曲調、そしてメロディーの動きの大きさやテンションなど、いくつかのパラメーターが大きく影響してくる。

完成した曲はアプリ上の五線譜にも表示され、音符を直接タップして編集することもできる。その際に譜面を見ると、赤や青で表示された音符が出てくる。これはメロディー内の音がコードに合っているのか、テンション(和音を構成する音以外で緊張感を与える特徴的な音)なのか、あるいはコードから外れるため利用に注意すべき音(アボイドノート)なのかを判別して表示されるもの。この仕組みがあることによって、音符が苦手な人でも、簡単にかつ音を外すことなく編曲ができるという。

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ちなみにChordana Composerが“2小節で作曲できる”とうたっているのは、最初のバージョンではマイクによる入力が2小節までしか対応していなかったことが大きいという。だが現在ではマイク機能が改善されたことで、設定を変更して入力できるフレーズが1~8小節まで変更できるようになった。ということで、実は1小節のフレーズだけでも作曲が可能なのだ。

自然な形で自動作曲を実現したのに加え、一見すると複雑に見えるという複雑な仕組みを、手軽に利用できるよう設計しているのも、Chordana Composerの大きなポイントといえるだろう。実際、鍵盤だけでなくマイクから音声を入力できるだけでなく、作曲を開始してから、曲が完成するまで待たされることなく、瞬時に曲を楽しめるようになっている。

南高氏も「時間をかければより多くの取り組みができるが、誰でも楽しめるよう、できるだけ短時間で作曲できるようにした」と話しており、譜面が読めなくても作曲を楽しめることを強く意識していることが分かる。もちろん、作曲の知識や経験のあるユーザーが使えば、より楽しめるのは間違いない。

Chordana Composer(コーダナコンポーザー)
http://world.casio.com/app/ja/composer/